世界の大思想27 デュウイ=タフツ 社会倫理学

キーフレーズ

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目次

2 を気づかせ、行為にたいする義務の正しい命令的権威を自所産であり、表現であるか、である。 覚させることにある。「善」と欲求の目的との同一性を主 問題は、理論的形式でのべられている。しかしながら、 張した道徳批評家たちは、これに反して、持続的満足をも重要な実践的意味をもっている。これらの問題は、たとえ たらす目的への洞察という意味における知識を行為におけば、前章で論じられた間題とつながっている。ほめること る最高のものにした。。フラトン がいったとおり、無知こそとけなすこと、重んじることとしりぞけることは、根本 万悪の根源である。しかも。フラトンによれば、真の目的で的、自発的傾向であるだけではなく、究極的でもあって、 あり、かっ善であるところのものへのこの保証された洞思考の批判的、建設的作業による改変を許さないかどう 養は、日常生活の中にふくまれるのとは全くことなった一 か。さらに、もし良心が独自の切りはなされた能力である 種の合理性をふくむ。この洞察は、宇宙の究極的構造の形とすれば、良心は、教育や改変が不可能であって、ただ良 而上学的把握まで彼らを上昇させる特異な諸性質にめぐま 心に直接的に訴えかけられうるだけである。実践的にいえ れている少数の人々によってしか、直接的には達せられえば、一番重大なのは、 いくつかの理論、たとえば、カント オい。他の人々は、この洞察を信するか、あるいは法律と派は、道徳的である行為と、道徳的に無関係で道徳的色彩 か制度として派生的な仕方で具体化されているままを認めをもたない日常の行為との間を、するどくくぎるという問 なければならない。さまざまな見解の衝突とむすびついて題である。 いる難解な諸間題のすべてにたちいらすとも、二つの重大 道徳的領域は、人間活動の他の領域から切りはなされる な間題が出てくるといえるだろう。第一に、思想や知識 か、という質間ほど、現実の行動にとって重大な意味をも は、情動のたんなる召使や随行者にすぎないのか、それとっ質問を発見することは、たぶん困難であろう。人間的目 も、思想や知識は、積極的で変革的な影響力を行使するの的や関係の中で、ある特別な種類だけが、道徳的価値をも か。第二に、道徳的問題とむすびついて使用される思想やつのか。こうした結論は、われわれの道徳的意識や知識が 判断は、ふつうの実際間題につかわれる思想や判断と同じ種類のうえで独自であるとする見解の必然的結果である。 しかし、もし道徳的意識が切りはなされない・ならば、行為 であるか、それとも、それらは、もつばら道徳的意味をも の中で道徳的領域を非道徳的領域からしめだすいかなる不 つ、切りはなされた何かであるか。十九世紀の争論の中で とった形式で、この間題をいいあらわせば、良心は、人間 動の境界線も引くことができないであろう。さて、われわ 的経験から独立した直感能力であるか、それとも、経験のれのこれまでの議論全体は、後の方の見解に味方してい

249 道徳的判断と知識 正義については、スペンサー『倫理学原理』第四部 Spéncer, Princip1es of Ethics, part IV 一ホブハウス 「社会的正義の諸要素』 Hobhouse, The EIements of Social Justice, 192 タフッ『正義の概念への心理学 上のいくつかの寄与』 Tufts, : Some Contributions of Psychology to the Conceptions of Justice ご『哲 学評論』第十五冊 PhiIosophica1 Review, Vol. XV. p. 36 ごカルキンス『善人と善』 CaIkins,The Good Man and the Good, 1918. ch. x. 第一節道徳的判断は直感的であるか、そ れとも発展的であるか 反省的道徳は、反省的である以上、思想をふくみ、知識 をふくむということは、自明の理である。しかしながら、 この自明の理は、理論のうえで、重大な諸間題を提起する。 知識が道徳的意味をもっ場合、知識の本性は何であるか。 その機能は何であるか。この知識はどうして生まれ、どう 働くのか。道徳を論じる著作家たちは、これらの疑問にべ つべつの答えをあたえている。たとえば倫理上の根本的契 機としての是認と立腹にこだわる人々は、こうした是認や 立腹の自発的で、「本能的ー性格、すなわち、非反省的性質 を強調し、道徳における知的契機には副次的位置しか認め よい。カントのように、義務の権威を最高の位置におしあ げた人々は、日常的生活や科学の中に姿をあらわす思考や 推理から、「道徳的理性」を区別した。彼らは独自の能力 を設定したが、この能力の主たる仕事は、われわれに義務 第十四章道徳的判断と知識

幻 アレクサンダー『道徳的秩序と進歩』と exander, Mor ・ al Order and Progress, pp. 242 ー 253 スティ ン『倫理の科学』 Stephen, Science of Ethics, 1882 ・ ch ・ v.; ス。ヘンサー「倫理学原理』第二冊 Spencer ・ Principles of Ethics, VoI. II. pp. 3 ー 34 and 263 ー 276 一シジウィック『倫理学の諸方法」 Methods of Ethics, 190L pp. 2 ー 5 and 9 ー 10 リッカビー『アク イナスの倫理学』 Rickaby. Aquinas Ethicus, Vol. I. pp. 155 ー 19 フィット 『道徳哲学』 Fite, Mora1 Philosophy, 1925. ch. 三第三章は、通俗的標準にお ける諸異説に関する議論をふくむ。 「自然的能力と徳」のためには、ヒューム『人性論』 第一一部、第三書 Hume, Treatise, Part II.. Book III および「人間悟性研究』第四付録 lnquiry, Appendix IV.; ポーナー『知的徳目』 Bonar, lntellectual Vir ・ tues. をみよ。 特殊な徳目の議論のためには、次の書物をみよ。ア リストテレス『倫理学』 Aristotle. Ethics, 第三書お よび第七書 Book III and Book VII., chs. i—x 正 義については、アリストテレス『倫理学』 Aristotle, Ethics, B00k V. ・リッカビー『道徳哲学』 Rickaby, MoraI Philosophy, pp. 102 ー 108 , および『アクイナ スの倫理学』 Aquinas Ethicus ( 目次をみよご。 ( ウル ゼン『倫理学体系』 Paulsen, System of Ethics, 189P pp. 599 ー 637 . ・ミル『功利主義』 MilI, UtiIitarianism ch. シジウィック『倫理学の諸方法』第三書 Sidg ・ wick, Methods of Ethics, 1901. Book III, ch. v. お よび目次 lndex; をみよ。スペンサーの批評について は、シジウィックの行なった『グリーン、スペンサー およびマアチノウの倫理学に関する講義』 Criticism of Spencer in his Lectures on the Ethics of Green, Spencer and Martineau. 1902. pp. 272 ー 30 スペン サー『倫理学原理』第二冊 Spencer, Principles of Ethics, VoI. II; ステ ィーフン『倫理の科学』 Stephen, Science of Ethics, 1882 , ch. v. をみよ。 人間愛については for benevolence アリストテレス 『倫理学』第七ー九書 Aristot1e, Ethics, Books. VII— IX ( 友人関係について ) 。 リッカビー『道徳哲学』 および『アクイナスの倫理学』 Rickaby, Moral PhiIosophY, pp. 237 ー 244. and Aquinas Ethicus ( 目次における慈善と施与をみよ。 charity and almsgiving) 。 パウルゼン『倫理学体系』第三部 Paulsen. System of Ethics, 1899 》 chs. viii and x of Part 一一ごシジウィック『倫理学の諸方法』 Sidgwick, Methods of Ethics, 190 尸 Book II. ch. ニスペン サー『倫理学原理』第二冊 Spencer. Principles of Ethics, V01. II. をみよ。また第十五章の末尾におけ る同情および愛他主義の関係文献をも見よ。